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毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
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ゆくとしくるとし


(声をね、声がね、)




ハルシオン・ブルー外伝
Intermission「四家鷹久」



 そう、そうだったの、と、白髪の青年は、柔らかい表情で頷いた。その眼前に頭を下げる五十嵐の長兄、晴次がいる。四家の屋敷は隠れ庵のごとき荒廃のし様で、畳なぞ泥の上の茣蓙かのような汚れようなのだが、晴次は構わず額ずけた。申し訳は無かった。しかし面目まで無いわけではなく、ただ、当主たちがこれから辿るだろう未来に頭を下げる。五十嵐ルウがシキガミと共に大結界を破壊して、一週間が経っていた。
「良いんだ、本当に。晴ちゃん」
 事の詳細を晴次から聞いた鷹久の一声はこうだった。そもそも、本来ならば当主であるルウが来るべき所を、兄の晴次が挨拶にきているのは、六東当主が五十嵐を訪れた際、ほとんど外出しない晴次をほぼ拉致の形で誘い出し、四家の領地を通るので、折角だから、ということで寄った次第である。拉致犯は、街の方へ買いだしに出て行って未だ帰還しない。
「変わった時が変わるべき時だったんだよ。オッサンもねぇ~これからイングリッシュ喋っちゃったりしようかなぁ」
 なんてねえ、と痩せた肩を揺らして鷹久は笑い、「四家はゆっくり生きていくよ」と目を閉じた。
 そうだ、まず、この離れ庵を壊してしまおう。もう必要ない。ここは代々四家当主ときょうだいだけが住まった場所である。この離れで、当主はきょうだいから力を搾取していたわけであるが、そういうことがもう要らない。なので、街にある本家に帰ろう。妹はきれいな着物を着せてやろう。風通しのよい部屋に、山茶花を飾ってやろう。庭にはたくさんの花を植えて、そして甘い舶来の菓子なぞ、商店で買い入れてやろう。そうしよう。
 
 ふと目を覚ますと、半分崩れた四阿の軒にいた。森のさざめきが降るようだ。木々の隙間から見える空が仄暗い。まるで不定形の洞に閉じこめられたような、空気で天井まで蓋されたような気がする。心なしが煙草の煙すら、天上まで昇らない。鷹久はいつもの、四家の離れ庵にいるのだった。
「……ココから出してあげることから、出来なかったねえ」
 後ろを振り向くと、質素な四畳間に、ほこりくさい、湿気を吸った布団が敷いてあり、そこに置物のような少女がねむっている。敷き布団は何年もそこにあるので、ほとんど畳に根を張っているような、もう境界があいまいになっているような気がする。少女も生まれてからずっとそこにいるので、まるでこの四阿のこけらのかたまりのようにすら見える。
 ――六年経って、世情は随分変わった。中心に五十嵐ルウがいる。良い勢いなのか否なのか、未だその答えは出ていないが、いくらかの土着文化がそうだったように、四家も時代の背を見送るもののひとつだ。最初はいろいろ順応と革新と保守の間でごちゃごちゃとしたものだが、革新の体質が性格でないことを味わって、大人しくあきらめた。なにしろ、植物状態の妹を、本家の屋敷に移してやることすらできなかったのだ。これが出来なくて、他の何ができるわけもない。菓子屋にも行けぬし、庭に花も植えられぬし、まして部屋に山茶花を摘むことも出来ぬ。
「情けない兄さんだよねぇ……」
 妹の頭を撫でてやろうとして辞めた。今まで妹に触れることは搾取の儀式だったから、そのことが思い出された。今はまだ触れない。でも、
「でも、せめて、兄さんがいつか必ず起こしてあげるからね」
 そのとき、君の口から、兄と呼んで貰えたら最高だ。そこまで我が儘は言えないけれど。
 どうにか、君の開いた瞳が、世界を映すその瞬間だけでも見てみたい。そうしたら、鷹久は、もう良い。この時代に生まれた価値があるというものだ、それだけでいい。

 鷹久はいつまでもこの不定形の洞で煙草を吸っている。天まで届かない紫煙を見つめながら、ぼんやりと、時間が経つ音を聞いている。そのときが来るのを待っている。





intermission
「一ノ瀬春木・九重刃音」


「春木は、この世界で一番最後まで生き残るのは、誰だと思う?」
「うーん、君じゃないかい」
 そうじゃなくて、と刃音は幼なじみの背中をつついた。春木の広くて大きな背中は、太陽の光を溜め込んでいたかのように温かい。自分の陶磁器のような身体とは大違いだ。もし性格が体温に影響しているなら、自分たちはその好例であろう、という確信がある。
「違うのか? 刃音なら、隕石も畏れて軌道を外すと思うんだが」
「春木って時々失礼だと、刃音は思うわ」
「えっ!? ごめん!」
 話が逸れてしまった。けして嫌味な性格でないのに、むしろその逆なのに、彼と話していると、話題の筋がどんどんずれるから不思議だなあと思う。刃音は手元のお茶に口をつけてから、もう一度切り出した。
「この世界で生き残るのはね、最も強い者じゃなくて、最も賢い者でもないのだそうだよ。春木は誰だと思う?」
「刃音、それはもしかして、ルウから聞いたことわざじゃないか?」
「あら、なんで分かるの?」
「なんというか……有無を言わせぬ選択肢の孤立の仕様が西洋らしい。最初から答えが混じり合う可能性も無いところが。洋物は五十嵐が出元だからな」
「ふふ、春木、ルウと同じ文句言ってるよ」
 さあ、あなたの答えはなにかな、と刃音に急かされて、春木は再度首をひねった。縁側に腰掛ける、二人の四本の足が、一定の調子でぷらぷらと揺れていた。しばらく唸ってから、首をひねり、おずおず、「また失礼かもしれないけれど……」などと口の中でもぐもぐ良いながら、春木は小さく呟いた。
「……刃音かな」
 刃音は今度こそ吹き出した。頭のかんざしが、ちりちりと鳴った。丸下駄の鼻緒と足袋の間を風がひゅるりひゅるりと通っていた。そして、となりで春木が盛大にうろたえるのを感じていた。
「何故と聞いてもいいかな?」
「うーん? なんて言ったって、君の周りには、みんなが居るじゃないか。それで皆、君のことが大好きだから。ちょっとやそっとじゃ死なないさ、うん、最強だと、俺は思う」
 空色の着物が、刃音の耳元でこすれてひらりと言った。すべての所作から太陽のにおいがした。ありがとう、と言うのが憚られた。彼があまりに当り前の顔をしていて、謝辞は見当違いの気がした。
――答えはね、春木、最後まで生き残るのは、強い者でも賢い者でもなくて、変われる者なんだって。
 そう言ったら、春木はどういうだろうか。少し考えて、間違ってなかったじゃないか、と白い歯をみせて笑いそうだ。
 九重刃音はそこまで想像して、そしてそれ以上は言わなかった。「ねえ、屋上行こう」と行って、春木を引っ張る。屋根の上から触れる木の又に、毎年鳥の巣が出来るのだ。春木と刃音が初めて会ったのもその場所なので、刃音は当主になってからこっち、その権限の元、屋根の上で遊ぶことが多い。足は春木であるが。春木は武家一ノ瀬当主、刃音のこともまるで羽根のように軽く抱き上げて屋根に上がる。

 (「刃音」は追いつきたい。追いつきたい。変わり続けるあなたたちに追いつきたい。本当は、もう務めが無いのなら、すべて無かったことにして、あなたにこのまま抱きしめてもらいたい、この鼻の奥が真空になるような気持ちをもっと、もっと、じょうずに説明したい。その指の肉の感触を確かめたい。堅い皮膚を撫でてみたい)
 
 九重刃音は、居並ぶ皆をうしろから見守っている。変わり続ける子を、変わることはしないで、定点で消えようとする子を、まだ立ちつくす子を、微笑みながら見つめている。一ノ瀬春木は、そんな中、後ろに立つ「刃音」のところへ来て、惜しむことなく手を握る。向こうへ居並ぼうとは言わない。ただ同じ所で立っている。









今年は大変大変お世話になりました。小説は、正直あまり書かなかったことを後悔しています。結局、イチから掻き上げたオリジナル作品は一本も無い……んじゃないかな。

来年は忙しくなるなると言われておりますが、自分でそう自覚すべきと思う時まで(ややこしい)、イソガシイなんて言いたくもないし、シュウカツなんて更に言いたくないので、まあ自覚したら言います。忙しがります。それまでは、自分のペースで行きます。今のところ、周りの人々がイソガシイと言っているだけです。

今年は、友達ナシじゃ生きてねえんだな、オラァよォということをしみじみ感じた一年でした!ほんにありがとうございました!!!!!!
2010年の抱負は「一生懸命」でした(※今タイプミスして「失笑懸命」と出しまして、15分ほど記事を書くのを中断しておりました。再開をお知らせ致します)。来年の抱負は「自業自得」で行きたいと思います!
ありがとうーありがとう!!わたしの今年書いた数少ない文字や絵が、一瞬でもみなさまの脳に反映され、それからほんの少しでも反芻され、そしてわたし以外の宇宙で息づいた瞬間を想像すると、涙が出るほど幸せになります。来年はもっともっと、創作によって愛される一年にしたいです。あきらめ悪いぜ!!!!

良いお年を^^


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林

Author:林
いらっしゃいませ
こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

オタクなこととかやおいなこととかきもちわるいこととか普通に言います
やな人は帰ってください

●文芸部特別企画
第一弾
流離人外伝

第二弾(完走!09'12)
夢十夜

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