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毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
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「あなたはどこへ辿り着きたいの?」






ハルシオン・ブルー外伝 十九



 ひやり、と頬が感じた時、意識は獣のように覚醒した。突然光を受け入れた瞳孔がとまどい、脳みそが信号に混乱して、しばらく景色がぼんやりとつかめない。一番最初に知覚したのは、嗅覚が受け入れた畳のにおい。それから――頬に触れていた、包帯だらけの指先を、視界が捉えた。
「起こしてしまいました」
 指先まで布を巻いた手を引っ込めて、きまじめな声が言った。「どこかまだ悪いですか」、と続く。感情が薄い。気遣わしげでもない。ただ真面目だ。七野なちは、頭を振って、唇を舐め、もう一度あたりを見回した。そこは質素で何もない和室だった。なちは簡単な床に寝かされており、四方は障子が固めている。それから、自分の枕元にいた青年を確かめた。
「五十嵐の……」
 長兄です、と、青年が丁寧に頭を下げる。両脚が無い。数時間前、なちが仲間たちと救出したその人、五十嵐家の晴次だった。彼は満身創痍だった。左手は首から吊っており、右手は指先まで布で巻かれている。精悍な顔の半分もまだ包帯が巻かれたままだった。その癒えていない傷を見て、ふいに、ついさっきまで一緒にいた四家当主のことを思い出し、なちは本当の意味で覚醒した。枕元に座っていた晴次の制止も聞かずに、床を飛び出して障子を力任せに引き開けた。まず身体に染み込んできたのは、夜の気配だった。開けた先は、単に廊下があって、向かいの部屋の障子の白がせまるだけだったのだが、廊下の先の暗がり、なにより、余韻をともなって耳に染み込む静けさが、夜を伝えてくる。あのとき、四家の屋敷で鷹久に付いていった時は夕時だった。あれから数時間以上経っている。そもそも、鷹久に付いて、五十嵐ルウと別れて――それから先の記憶があいまいだ。どうしても思い出せない。
「七野当主、動いては……」
「うるさい、五十嵐がアタシに命令すんな!」
 晴次の声もはねのけて、なちは脳みそを回転させるのに精一杯だった。五十嵐晴次がいるということは、ここは久住院、京都の筈である。あの時、神父との戦いを任せた場所――だが、この静けさは何だ? 神父はどうなった? 何故鷹久にいさんはここに居ないのか、そして、彼が、仲間の傷を癒しもしないで放るなんて――。
 探しにいかなきゃ、何より、あのとき置いていった仲間を誰かひとりでも見つけなきゃ。京都が今どうなっているのか、それが今一番の謎で、自分はその渦中に来たのだ。探しに出ない手が無い。なちは廊下へ出た。後ろから、「七野当主」と、再び晴次の声があったが無視した。なちは五十嵐兄妹を好いていない。それより、今の状況が知りたい――。
 「七野当しゅ、――」。五十嵐晴次の声が途中でとぎれて、ドサッという音が続いたのはその時だった。無視するつもりでいたなちは、その音に思わず歩をとめて振り替えざるを得なかった。なちの視界に入ったのは、姿勢を崩して倒れ込んでしまっている晴次である。なちを追おうとしてそうなったのはすぐ分かった。彼には両脚が無いし、さらに今は両手までほとんど使い物になっていない。傷に響いたのか、微かに呻いてから、起き上がろうとするが、手が使えない。何かものを考えるまえに、なちの両手が伸びていた。肩を貸すと、申し訳ない、という声が小さく呟かれた。


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Author:林
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こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

オタクなこととかやおいなこととかきもちわるいこととか普通に言います
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●文芸部特別企画
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第二弾(完走!09'12)
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