Featuring

毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
11


スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ハルシオン・ブルー外伝十一

ハルシォン・ブルー外伝 
十一 「邪魔」





 なちの意識は暖かい何かが額にふれるので覚醒に向かった。ぼんやりと視界が白んできて、脳みそを中核に、末端へと覚醒が行き渡る感覚がある。この心地の良いまどろみを、無遠慮な痛覚が刺激して、なちはようやく意識を戻した。「あっ、」と声が漏れて、腹部を中心に鈍痛が広がる。思わず体を丸めそうになって、そこで、自分が誰かに抱えられているのに気づいた。額に手が置かれている。暖かい覚醒はこれが原因だった。
「なっち、気が付いた?」
「……鷹久にいさん」
「もう治るからじっとしてて。先生から聞いたよ、みんなを守ったんだって。偉かったねぇ」
 白髪の青年は、そう言って、平素と変わらない様子でへらへらと笑った。あんまり普通なので、安堵の勘違いをしかけたところで、混乱が目を覚ました。「ここは!?」と顔色を真っ青にして叫んだなちに、四家当主は静かに微笑んで、「京都だよ、九重の屋敷だ」
「……この子がなっちをオレのとこに運んできたんだよ、あとでお礼してね」
 鷹久がすぐとなりを顎でしゃくって指した。まだ揺れる視界を動かしてそちらを見ると、そこには藍色の装束を着た少年がちんまりと無愛想に立っていた。
「だれ?」
「いやー、オレもビビッたんだけどねぇ~、八代の新しい当主だって」
「はぁ!?」
 思わずなちは飛び起きた。その少年は全くもって小さかった。まだ十に至るかそれ以下か。忍のような格好で、矮躯に目つきばかりが悪い。なちの理不尽な驚愕と不躾な視線にも、少年はただじっとしているだけだ。「このガキが!?」というなちの言葉にも沈黙で返すのみ。鷹久はへらへらしている。
「まー、自己紹介はまた落ち着いてやろうね。今はちょっと忙しいからね」
「あっ、そ、そうだ! 兄さん、今どうなってるの!? 先生たちは!?」
「先生もルウちゃんたちもみんな無事だから大丈夫」
「神父は!? どうなったの!?」
 えーとね、と、鷹久はのんきそうに頭を掻いて、庭先を指さした。
「あっちでご当主に説教されてる」 



 いやー、と黒ずくめの青年は、困った風に笑った。涼やかな所作で、恋人の部屋を尋ねるみたいに優雅に、自分を囲った檻を内側からノックする。
「参りまシタ。これは簡単に抜け出せまセンねぇ、ご立派な結界デス」
 顔立ちの整った青年である。長身痩躯で、キャラコのカッターシャツ、黒く細身のカソック、胸元に銀のロザリオを下げ、長めの髪はプラチナブロンドをしている。二十代に見えるが、いざ目をこらして見定めようとすると、焦点がブレてしまうような、奇妙な気配を持つ青年――俗称を神父という。
「うん。間は小さくても当主だから。なめてかかるからこうなる」
 神父の目の前に立って、彼を見上げながら、九重刃音は穏やかにきっぱりと言い切った。深紅の中袖をまとった両手は礼儀正しく前で揃え、真っ黒な瞳で異人の侵入者をひたと見据える。神父は今、八代間が張った結界の中で立ちつくしていた。場所は九重屋敷久住院の中庭。五十嵐で檻に捕まったまま、三条当主に手でここに檻ごと放り出されたのである。
 九重の屋敷は、それ以外はとても静謐であった。時折遠くで竹林のさざめきすら聞こえる。神父と刃音は両者ともただ静かに目を合わせてじっとしている。一見して、気品ある青年と少女の礼儀正しい邂逅だったが、その間には霜でも降りそうな冷たい気配に満ちていた。やがて刃音が、神父の青い瞳から視線をそらすことなく、口を開いた。
「きみにはいろいろ聞きたいことがあったんだけれど――でも、晴次、ルウ、亘、春木、夕陽、なち……刃音の大事な家族に取返しのつかないことをしたから、全部なしです」
 刃音の口調はよどみない。少女はその後きっぱり言い切った。
「おまえ、邪魔。かえれ」
 神父はそれを聞いて、小気味よく吹き出した。丁寧に頭を下げる。
「そのコトバ、侵略者冥利に尽きマスよ。でもねェ、我が名は神父――旧慣を排して新たなる時代をもたらす者――」
 不敵に笑い、
「お前らこそ、去れ、旧き悪習ども」
 少女はその侮蔑の刃なんかまったく気にもならないといった風に、首をかしげ、「では、まず刃音達に勝ってご覧」と鈴のように上品な声で言った。
「刃音たちは新しい時代を拒まない。我らが旧慣となるをも厭わない。なぜなら畏れるに足りないからだ。我々をいくら時代のおもてから消そうとしても無駄だよ。お前は我々の死体は手に入れるだろうが、服従は手にできないだろう――だから、正面きってお前と戦ってやる。最初から我ら全戦力で」
「……フゥン、じゃ、出してくれるんですカ? 好機を逃すとハ」
「正々堂々という戦い方もしらぬお前らに言われたくない」
 そこまで言うと、刃音は潔くきびすを返した。まだ十といくつかの少女の背中は、研ぎ立ての刃のように張りつめて鋭い。少女が帰るその向こうには、一から八までの当主達がいる。九重刃音は最後に背中で言った。

「これは最後通牒だ、神父。お前は負けて、外洋に伝えなさい。刃音達は拒まないが、手を出すならば覚悟せよと」
 

 


ずっとドSのターン
あまりの怖さに背後で亘とか涙目
鷹久とかは「コッエ~まじパネェ~」とか思っている


Comments

Leave a Comment


Body

プロフィール

林

Author:林
いらっしゃいませ
こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

オタクなこととかやおいなこととかきもちわるいこととか普通に言います
やな人は帰ってください

●文芸部特別企画
第一弾
流離人外伝

第二弾(完走!09'12)
夢十夜

カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
手書きブログ

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。