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毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
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ハルシオン・ブルー外伝十

 Let us, then, be up and doing, With a heart for any fate.




ハルシオン・ブルー外伝
十.「孫」


「……助太刀」
 ぼそっと一言、そう言って、八代当主八代(あわい)はくるっとユウヒを振り向いた。あんぐり口をあけて硬直していたユウヒは我に返った瞬間に思わず、
「ちっさ!!」
 ――少年は本当に幼かった。顔立ちから見るに、まだ八つか九つ。最年少当主のなちより幼い。矮躯を黒装束で固め、機動性に富んだ忍のような格好をしている。黒い子猫みたいな風貌だ。とりあえず、様々なことを予想外すぎてユウヒの賢い脳みそも許容いっぱいだった。
「いやだって……え!? お前誰じゃ! ジジイは!? 嘘やろ!? 若返っ……んな筈あるかっ!? ちっさっ!」
「爺様、引退した。今日から、……おれが当主」
 だがこの結界。八代のお家芸は結界術。その精度は他と比肩し得ないのだが、確かにユウヒのまわりに張り巡らされた結界は、ユウヒ自身で驚くほどの精度だった。
「あーもう、ジジイが孫になっててもええっ、後回しじゃ! チビ助! 五十嵐兄妹と亘と合流せい、オレが神父足止めするっ! 織里姉の西瓜と来たんなら話は聞いとるんじゃろ!?」
 少年がこくっと頷いた。その瞬間に結界が消滅する。ユウヒはなちを少年に押しつけて、結界に行く手を阻まれていた神父につかみかかった。希望が見えた。それだけで身体が動く。八代が来た。もうこちらの勝ちだ。
「……浅薄な。アナタ達も学習しまセンね。守り手が増えても意味ありまセンよ」
「浅薄はそっちじゃ、無学者」
 何、と神父が小首をかしげた。取った、初めてこいつから一本取ってやった。ユウヒは今日一番の強がりで、不敵に笑った。
「誰がここで戦うと言った。俺らはお前を迎えに来たんじゃ」
 ぱきん、と竹が割れたような音があたりに響いた。その正体を確かめる前に、あたりに壁が建つ。一瞬でそこにいる全ての人間が一つの檻の中に囲われる。信じがたい速度だ。八代間が、結界により全員を一カ所に固定。逃げ出さないように押さえつける。
「我らが都で、全面戦争と行こうやないか!」
 そしてその巨大な檻ごと、三条亘が持ち上げる。亘の底力があたりに風となって吹き荒れて、一瞬視界が白くなり、息を呑む間に、神父と当主達の姿は、五十嵐の屋敷からかき消えた。




「……帰ってくる」
 そう呟いたのは、縁側にじっと正座して表を見ていた刃音だった。「織里、西瓜丸を呼んでいて。ちゃんとこちらに来るように」、後方で同じく待機していた六東当主に言いつける。
「鷹久、みんな怪我してるかもしれないから、なおしてあげてね」
 はいはい、と微笑んで、四家当主が縁側に出てきた。だらしなく片腕を懐につっこんで、もう片腕をひさしにやって、刃音の後ろから空を様子見する。
「春木は前へ」
「御意に」
 ぺこっと頭を下げて、一ノ瀬当主も四家に並んで空の様子をうかがう。中天も過ぎた青空。雲の輪郭がぼやけ始めている。あと数時間もすれば黄昏になるだろう。九重の屋敷久住院は、三人の当主が飛び出してらは再び平素の静寂にあった。竹林のさざめきが潮騒のように起きては引く。九重当主の刃音は家の下人達にすべて暇を出した。故に人気が無い。今居るのは、織里、鷹久、春木、そして刃音の四人のみである。
 大結界の御役目を奪われて数年、当主達の眼前に突如として現れた天敵を――当主達は、自らの懐の中で処理することに決めたのだ。
「――いつか来るとは思っていたけど、まさかこんなに早く、それも強いのが来るなんて思わなかったねぇ」
 鷹久が、はっきりしない空を見つめながら呟いた。自分たちを排せんとする海外からの潮流のことである。
「鷹久もじゅうぶん強いよ」
 刃音がにっこりと微笑んだ。いくつも年下の少女の言葉に、四家当主は敵わなさそうな顔で肩をすくめる。
「……ルウと晴次さんはあんなに懸命に共生の道を探していたのに、ままならないものだ」
「先生なんか『西洋医学おもろいわー!』って楽しそうだったけどね。あの人意外と自由だよねェ~。オッサンそのうち腹ァ開かれちゃいそう」
「鷹久にいさんは、そんな不健康なことばかりするから、先生やなちに目をつけられるんですよ」
 ふふ、と笑って、春木は脇差しに手を置いた。「もっと上手に、」と苦笑する。
「もっと上手に、一緒にいられたら良かったのに」
 ハル、と鷹久が口を開いた時、三人の背中を織里の声が刺した。「帰ってきます!」――春木がすばやく刃音と鷹久を背中に庇って前へ出る。一定の穏やかさで流れていた時間と空間が突然あえぐように行き詰まるのが分かる。不協な空圧、異物の入り込んだ時空の嗚咽が――きりきりと限界に達したとき、九重の土地の上に突如として異物の城が吐き出された。
 ばっ、と視界が翳る。
 一息吸う間にそれは『檻』ごと地面に叩き落ちた。春木の横に掛け出した織里が、「西瓜っ」と叫んで自らのシキガミを引っ張り寄せる。檻の中の猛獣が一声上げた。その透明な結界からするっと抜け出す。首もとにしがみついてるのは、ルウとなち、それから彼女らにささえられた晴次と亘。待っていた四人はそこに足りない二人を感じてぞっと背筋を冷やした。「先生っ!?」と春木が思わず一歩前へ掛け出しかけたそのとき、もう一つ結界を破って外へ飛び出した影。
 ひとつは藍色の矮躯。その背中に抱えているのは、九ツ家の医家役、二名ユウヒである。
「鷹久」
 じっとその様子を見て動かなかった刃音が、隣に控える青年に静かに言いつけた。「うん」、と四家当主は首肯して、藍色の少年が引きずってきたユウヒを何も言わずに預かった。
「八代の当主ですね」
 刃音は眼前にいる藍色の少年に視線を合わせた。少年は礼儀正しくぺこっと頭を下げる。「八代(あわい)です」。万事それで通じたのか、刃音はただ「大儀でした」と礼を返した。八代の新たな当主たる藍色の少年は、それから、すっと九重の庭先にそそり立つ檻を指さした。その中に囲われているのは、
「あれが神父なんだね、(あわい)?」
 刃音が確認すると、少年は無表情のまま頷いた。今のところ、その檻は静かだった。成り行きを「やれやれ」といった感じで見守るみたいな、そういう気配で。九重当主の少女はそれを冷静な目で見定めた。見定めながら――鷹久が抱えていったユウヒは疲弊しきって、むき出しの手足は擦り傷だらけだったし、亘はもうしばらく動けなさそうなくらい消耗してるし、ルウにかかえられたなちは苦しそうに咳き込んで、晴次も満身創痍、ルウは深い混乱の悲しみのふちに立ちすくんでいる――ちりっ、と耳元で鈴の音が跳ねた。焦げるような視線で檻を見た。冷静にあらゆる事象を確認しながら、冷静に焼けこげる胸中を眼光に載せて、九重刃音は静かに立ち上がった。
 
 


みじかい

MK5 九重当主
(マジでお前ころしちゃうかもよの五秒前)
 
十話にしてやっと副題をつけはじめるしまつ


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林

Author:林
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こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

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