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毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
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ハルシオン・ブルー外伝六

”お前が望む革命に、お前が成れ”

You should be the change that you want to see in the world.






「なち、いつまでひどい顔をしているんだ。元に戻さないと、帰れないよ」
「……じゃあ春木兄さんだけ先にどうぞ、あたしはここにいます」
 つっけんどんななちの反応に、春木は薄い嘆息をついて、「それはダメだ」と少女の横に並んだ。春木が歩くと、腰の日本刀の鍔鳴りがする。しゃん、しゃん、と春木は歩く。
 二人がいるのは、九重の屋敷・久住院の庭園であった。竹林がさざめく美しい庭だ。朱塗りの獅子脅しが時々声を上げるだけで、あとは笹の葉の騒ぐのを除けば静かなものだ。なちは先刻、ルウとケンカしてここに来ている。ケンカといったって、なちか一方的に言いたいことを言ってきただけなのだけども。
「なちは五十嵐が嫌いなんだなぁ」
「当たり前です! なんでみんな平然としてるの? あいつらが国を開いたせいで、あたし達術士はこうやって滅びの危機にあるんだ、七野だって無用よばわりされて……」
「でも、あのままいけば、遠い未来は大結界が俺たちを苦しめることになるって、聞いただろう?」
「そんなの、会ったこともない異人のシキガミの話でしょ。信じられるもんか」
 なちはいっこうに意見を変えようとしなかった。余程、七野のことが好きなのだなと春木はその小さな背中を見ていた。『書類管理の七野』とさんざ馬鹿にされてきた彼女の一族の面目を立てる為に、なちは今までの秘密書類管理という伝統から逸れて、自ら術書を勉強してそれを身につける努力をした当主である。若干十二にして、なちはあらゆる術書を暗誦し、そこに書かれた呪術を体得した天才なのである。
「……鷹久兄さんだって、そのせいで……」
 ぎりぎりと奥歯をかみしめる七野当主のかたくなさに、春木はそれ以上言葉をかけることもしなかった。「そうだな」と真面目な顔で頷いて、なちの髪の毛にのっかった笹の葉をそっと払ってやった。





「織里ちゃん」
 声をかけられた六東の当主は、振り返らずに作業を続けた。声だけで「なあに」と答える。
 織里は、刃音に頼まれて、日本各地の術家へ遣い魔で連絡を送っていた。内容はもちろん、神父への警戒である。まだ来ない八代の家には催促状もくっつけた。
「オレんちへの遣い魔に、これもくっつけて送って欲しいんだけど、まだ間に合う~?」
 声の主は顔を見なくても分かっていた。織里のことを「ねえさん」と呼ばないのは、同い年の春木と、年上の鷹久、九重当主たる刃音だけで、ちゃん付けするのは間違いなく真ん中の奴である。
「平気よ、鷹久にいさん。これから送るところなの。それより亘は平気なの?」
「ああ、今は眠ってる……っていうか、なに、その虎で送るの? も少し節約して、小型の遣い魔にしたら?」
「私はこの子が一番好きなの」
 しれっと言い放つ少女の前には、やはり巨大な白虎がたたずんでいた。織里の術力で作り出された織里のシキガミである。虎の姿をしているのは彼女の全般的な趣味のためだ。
「あっそう。オッサン、織里ちゃんの趣味は計りかねるなァ~。弟くんと足して二で割れればいいのにね」
「あの子はかわいいからそのままでいいじゃない? 私より振り袖が似合うのよ、今度見せてあげるわ」
「残念だけどそういう趣味は無いなぁ」
 四家当主は少し引きつった顔で笑い、織里に小さな包みを手渡した。
「……いつもの薬ね。先生がくれたの?」
「うん、ちょうど切れそうだったんだ。言ったらすぐ調合してくれたよ」
 そう、とそれ以上特に追求しないで、織里は包みを虎にくくりつけた。絶対落とさないようにと念を押す。虎と会話をしているような織里の背中をみながら、鷹久は「よろしくね」と手を振って、またふらりと居なくなった。織里は迎えた時同様に声だけで見送った。
 少女はしばらく、せっせと伝達事を虎に伝えていたが、ふと振り返った。もちろん鷹久はいなくなっていた。
「……ままならないものね」
 と、誰にでもなく呟いて、織里は虎の頭を撫でた。「よろしくね」と優しく額に口づける。






 刃音の向かいには、一ノ瀬当主の春木から順番に、七野当主なちまでが座していた。八代の当主は来るのが遅れている。三条当主の亘は、別室でまだ眠っていた。
「来てくれてありがとう、みんな。さっきみんなが見聞した通りだけど、”神父”に一ノ瀬が襲撃されて、さらに三条当主が負傷しました」
 黒い髪の毛先にまで、静かな激情のような緊張がみなぎっていた。刃音はピンの伸ばした背筋を崩すことなく、黒い大きな瞳で、一同に会した当主達を順繰りに見つめる。
「……みんなのこと守れなくてごめんなさい。九重の対応が遅かったから、大事なみんなを傷つけた。もうこんなことがないように、この国の支柱たる九人の当主達、協力して欲しい。海外からの流入を……妨げるつもりはない。この国は、貿易で潤い始め、民も新たな文明の開化に豊かになった。刃音達が戦うべきは、伝統を脅かすもの。新た故に、蹂躙を厭わぬ不埒者」
 名を”神父”。九重当主は少しだけ頭をもたげて、
「彼らは刃音の大事なものを傷つけた。よって彼らを排除します。この国の、神代から受け継ぐ我らの力でもって、旧き力を知らしめる」
 そしてもう一度、「協力してくれるかな」と皆を見渡した。
 一ノ瀬春木は古武士のような雰囲気で、如才なく頭を垂れる。
 二名夕陽は、握り拳を左の掌にぱしんと叩き付けて頷き、
 一同正座の中だらしなく足を崩した四家鷹久は、へらっと微笑み、
 六東織里は、柔らかい微笑みのまま、はい、と静かに答え、
 七野なちは、待ってましたという顔で強く刃音を見返した。
 
 五十嵐ルウは何も言えなかった。難しい顔をして黙った。ただ、もし”神父”どもが、本当に術士を排除にかかって、そしてもし兄・晴次に手を出したならば、彼らを許す道理は無い。
 畳のにおい横糸で、どこからか漂う香が縦糸になって、皆の静寂を織っていた。その日、日本を影で支配してきた九つの当主は、その存亡の為に果てない世界と対峙する決意をした。




二連更新でした。
ほんとはふりがなつけようと思ったんだけど、タグ打つのが死ぬほど面倒だったのでフィーリングでお願いします(おま
<参考>
一ノ瀬春木(いちのせはるき)、二名夕陽(ついなゆうひ)、三条亘(さんじょうわたる)、四家鷹久(あみいえたかひさ)、五十嵐ルウ(いがらしるう)、六東織里(むつあづまおり)、七野なち(ひつのなち)、九重刃音(ここのえはね)

手抜きっていうの禁句

どんどん八番目の出るタイミングがなくなっていくんですけど!(…
さてと、これからドンパチが始まる……かもしれない


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プロフィール

林

Author:林
いらっしゃいませ
こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

オタクなこととかやおいなこととかきもちわるいこととか普通に言います
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●文芸部特別企画
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流離人外伝

第二弾(完走!09'12)
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