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毎日の出来事を何となく綴る日記。

 
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ハルシオン・ブルー外伝4





いっしょにいきるということ






「亘!?」
 春木は慌てて小柄な少年の両肩を揺さぶった。少年はぎゅっとまぶたを閉じたまま動かない。ずっと腕の中に庇っていた妹の春花も、息が荒いままだ。春花は生まれつき肺が悪い。やっと十になったばかりだが、いつも座敷で寝たきりだった。そんな彼女に火事の煙が良いわけがない。
 くそっ、ともう一度歯がみする。悉く不意を突かれた。まさかこんなにも早く本家に乗り込んでくるとは思ってもいなかったのだ。
「神父め……!」
 ともかくふたりを安静にせねばならない。特に春花の方は病が原因なのだから、医者に罹らねばなるまい。しかし春木に医術の知識の持ち合わせは無い。亘はおそらく術の使いすぎだ――この子は術を乱用してはいけない事情があるのに。無理をさせてしまった。
 春木がいるのは、恐山の中腹だ。亘が外に出ようと、朦朧とするなかで術を使った為だろうか、屋敷からずいぶん離れたところに出てしまったのだ。人気のあるところまで遠い。ふたりを背負って下るには遠いし、置いて人を呼ぶにも遠い。己の未熟が口惜しい。 
 春木が事を起こしかねているそんな時、ふいに彼の第六感に何かが引っかかった。首筋の後ろが痛む感覚――術士の気配である。これは、と顔を上げたその時に、空から少年の呼び声がかかった。
「春兄!」
 春木がその声に、視線を上げる。陸奥の秋空に、巨大な――獅子の影。
「――織里! ユウヒ先生!」
 まさしく天かける獅子は、ぼんやりと輪郭の揺らいだ巨大な白虎である。それはあまりに巨大な術力の具現化と固定化――北陸は越前、六東家の遣い魔だ。獅子の背に乗るのはふたり、一人はゆるやかな栗色の髪を長く伸ばした女性――六東織里である。獅子の操縦者で、遣い魔とシキガミ術の第一人者だ。そして、上空の獅子から、春木の方へ、もう一人がばっと飛び降りる。
 小柄な影はまた少年のもので、彼は如才なく地面に着地して、その体を表す快活な声を上げながら春木に駆け寄ってきた。
「春兄! 遅うなってすまん! それと『先生』は無しやいうとるやろ!」
 橙色に近い赤毛を短髪にし、薄手の甚平姿の少年は、はきはきとした関西弁を喋る。年の頃は十八あたり。主に近江や丹波にその領地を置く、二名家現当主の二名ユウヒである。一挙一動ににじみ出る活発さがあり、打てば響く溌剌さが体から発露しているような少年だ。
 ユウヒの軽口はいつもの挨拶である。彼はすぐに春花と亘に駆け寄って、難しい顔をして、手持ちの鞄をごそごそやり始めた。
「春花ちゃんにはいつもの薬の強いやつやるから、それ飲ましてくれ。あと強心剤や。亘坊の方は」
 ぐったり動かない少年をじっと見てから、ユウヒは背後にいる白虎の方へ振り返る。背の高い女性が、白虎から降りて、労るように背を撫でてやっているところであった。巨大な術力のカタマリである遣い魔は、心地よさ気に目を細める。まるで生きているようである。
「織里姉! 亘はアカン、鷹久兄さんでないと治せへん! 先に九重へ連れてってくれ!」
「はいはい。ユウヒ先生は行かないの? 春木も」
「ああ、オレはここでふたりの治療してから行くわ。織里姉のそのトラならすぐ行って帰ってこれるやろ」
「トラじゃないわ、まだコトラよ。これからおっきくなるんだから」
 自分の三倍以上の大きさのある獅子を従えた女性は、そう台詞面は憤慨したようなことを言うが表情はいつものように泰然としているのでまったく危機感がない。六東織里は、栗色の長髪を高く結い上げた長身の美女だ。年齢的には春木と同い年で二十歳になる。
 織里が亘をひょいと抱き上げて、白虎にまたがろうとした時、
「ユウヒ先生、織里、待ってくれないか。俺も九重へ連れて行ってくれ」
 と、春木が声を上げた。
「おいおい、春兄。春花ちゃんはどうすんじゃ、それに一ノ瀬の屋敷も! まだ収拾のついとらんのやろ!? 当主がいなくなったらアカンのとちゃうか」
「大丈夫だ。きょうだい達と他の一族がいるから。俺がすべきは、一ノ瀬の手当じゃなくて、術家全体を後手に回らせないようにすることだと思うんだ。今、遅きに失すれば、今度は他の家に被害が出かねない」
「……やっぱり神父なの?」
 と、問うのは織里である。春木は一つだけ重く頷いて、まだ少年のように真摯な瞳を悔しげにすがめた。じっと耳を澄ませていたユウヒは、長く息を付くと、「とうとう此処まできよったか」と一人ごちる。
「分かった、春兄。今すぐオレも行く。都で、九家そろい踏みで作戦会議じゃあ! 亘のカタキとっちゃるで!」
「やーねー、ユウヒ先生、まだ死んでないわ。なんとか」
 生まれてこの方、深刻な顔なんかしたことがない、といった風な安穏とした表情の六東当主だが、愛騎たる白虎の方はもう走り出す準備は万全のようだ。薬を飲ませた春花のことは、織里のもう一匹のシキガミに屋敷の者のもとへ運んでもらうことにし、一ノ瀬・二名両家当主も巨大な白虎の背に乗り込む(動物に乗り込むというのもおかしな話だが、それくらい白虎は巨大だ)。
 東北の要たる一ノ瀬家と三条家当主の重傷――じっくりと確実に、魔の手はそこまでせまっていた。ふいに暗がりから首筋に牙を立てられて絶命するかのような、慎重さと大胆さ。
 術士達が対峙するは海の向こう、いくつもの文明を飲み込んで成長した世界の覇者。










短い 林です

えーと……あと出てないのは、八の家だけで合ってるかな?みんな出たかな?
4話目をこんなにもたつかせた原因は確実にユウヒ先生ですコノヤロー。口調がずっと定まらなくて、でもぜったいに一人くらいは関西弁キャラを出したくて(せっかくご当地カラーがあるから)、でもユウヒくらいしかしゃべらせられる子がいなくて、でもユウヒが関西弁しゃべってるのはなんか、あたし的に違和感で(笑)
結局、広域的な(←)関西弁となりました。



二名夕陽(ツイナ・ユウヒ)
18才・男性
二名さんちは代々薬師(医者)の家系なので、みんな年下のユウヒのことを「先生」って呼ぶ。
でも本人は超体育会系。たぶん冬でも半袖半ズボン(の甚平姿)
ルウのケンカ相手(?)
冬月(フユツキ)っていう名前のお兄ちゃんが一人いる。

六東織里(ムツアヅマ・オリ)
20才・女性
遣い魔・シキガミ術のエキスパート六東家当主のおねえさん。
いっぱい遣い魔を飼ってるけど、一番のおきには巨大な白虎の「西瓜丸(すいかまる)」。
猛禽類系がとても好き。いつか自分で自分の遣い魔動物園をつくるのが夢だ
弟がいる。


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プロフィール

林

Author:林
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こちらは林鉄のぐだぐだな日記です。
主にネタメモ、突然ネタメモ

オタクなこととかやおいなこととかきもちわるいこととか普通に言います
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●文芸部特別企画
第一弾
流離人外伝

第二弾(完走!09'12)
夢十夜

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